非課税メリットを最大化するために知っておくべき落とし穴
「NISAなら高配当株が正解」
「配当金はもらっていて安心だし、お得そう」
投資を始めたばかりの方ほど、こう考えたことがあるかもしれません。
しかし、新NISAの仕組みを正しく理解すると、配当金中心の運用は必ずしも有利とは言えないことが分かります。
本記事では、
- なぜ新NISAで配当金が不利になりやすいのか
- どこで“非課税のうまみ”が削られているのか
- では、どう考えるのが合理的なのか
を、制度・数字・投資効率の3点から整理します。
そもそも新NISAとは何を「非課税」にしてくれる制度なのか
新NISAは、2024年1月から始まった恒久型の非課税投資制度です。
最大の特徴は、運用で得た利益に税金がかからないこと。

通常、株式や投資信託で利益が出ると、
税率 20.315%(所得税等15.315%+住民税5%) がかかります。
つまり、利益が出た瞬間に約2割が税金として差し引かれる仕組みです。
これが新NISA口座では、原則ゼロになります。
(※以下、画像はすべて金融庁のNISA解説から引用しています)
新NISAは「2つの投資枠」に分かれている
新NISAには、次の2つの枠があります。
- つみたて投資枠:年間120万円
- 成長投資枠:年間240万円
合計で、年間最大360万円まで投資可能です。
ここで大切なのは、「毎年使える上限」が決まっているという点です。

生涯で使える非課税枠は「1,800万円」
新NISAには、生涯で使える非課税枠の上限があります。
- 合計:1,800万円(簿価ベース)
- 内訳
- 成長投資枠:最大1,200万円
- つみたて投資枠:600万円
ポイントは、簿価(買った金額)で枠を消費するという点です。
評価額が増えても枠は増えません。

非課税期間は「無期限」
旧NISAと違い、新NISAは非課税保有期間が無期限です。
- 期限を気にせず長期保有できる
- 売却タイミングに追われない
この設計により、長期・複利運用との相性が非常に良い制度になっています。
非課税でなければ税率は20%
本来、株や投資信託で利益が出ると税率は20.315%です。
内訳は所得税等15.315%+住民税5%。
つまり、利益が出た瞬間に約2割が持っていかれるということに。

でも新NISA口座なら、この税金が基本ゼロになります。
だから「効率がいい」って言われるんです。
また、新NISAは、売却した分の枠を翌年以降に再利用できます。
売却すると翌年には枠が復活するんです!

ここからが本題:なぜ配当金が不利になりやすいのか
理由① 配当は「枠を復活させない」
新NISAでは、売却した分の投資枠は翌年以降に復活します。
しかし、
配当金を受け取っても、投資枠は復活しません。
つまり、
- 配当をもらう
- そのお金で再投資する
- その分、新しい投資枠を消費する
という流れになります。
結果として、
生涯1,800万円という貴重な非課税枠を、配当のたびに削っていくことになります。
理由② 外国株の配当は「完全非課税にならない」
米国株などの外国株を新NISAで保有している場合でも、
配当金には現地課税(米国なら10%)がかかるケースがあります。
- 日本の税金 → 非課税
- 海外の税金 → 引かれる
「非課税のはずなのに、税金が引かれている」
と感じる人が多いのは、この部分です。
理由③ 配当は「複利効率が落ちやすい」
配当金は一度現金化されます。
その時点で、
- 再投資のタイミングがズレる
- 手動で再投資する必要がある
- 枠の消費を意識しなければならない
といった摩擦が生まれます。
一方で、配当を出さずに内部で再投資される投資信託や成長株は、
非課税枠の中で自動的に複利が回り続ける仕組みです。
実際、みんなは新NISAをどう使っているのか
しかも、2025年6月末時点でNISA口座数は約1,920万口座まで増えています。
ここまで広がっている制度。

実際、みんなはどっちの枠を使っていると思いますか?
全証券会社の集計(2025年1〜6月)では、
- 成長投資枠:73%
- つみたて投資枠:27%
成長投資枠の内訳は、
- 株式:60%
- 投資信託:40%
「NISA=投資信託だけ」というイメージとは違い、
多くの人が成長投資枠も積極的に使っているのが現実です。
「NISA=オルカン」ってよく聞くのに、
実は個別株を買っている人もかなり多いんです。

つまり、多くの人が「つみたてだけ」じゃなく「成長投資枠も使う」流れに入っています。
新NISAで意識したい考え方(チリトク的まとめ)
新NISAは、
- 非課税
- 無期限
- 枠が有限
という特徴を持つ制度です。
だからこそ重要なのは、
「いかに非課税枠の中で、効率よく資産を増やすか」。
配当金は悪ではありません。
ただし新NISAでは、
- 枠を消費しやすい
- 税の完全非課税にならないケースがある
- 複利効率が落ちやすい
という構造的な弱点があります。
新NISAの非課税メリットを最大化したいなら、
配当よりも「値上がり+内部再投資」を重視する。
これが、制度設計に素直な考え方です。
あなたは、
新NISAの貴重な1,800万円の枠を、
「どこで・どう使う」戦略を取りますか?
チリトクでは、
制度に振り回されず、仕組みを味方につける投資をおすすめしています。

